健康管理アプリからのフィードバックが身体活動促進の動機づけになる
国立大学法人筑波大学 株式会社Wellmira
スマートフォンの健康管理アプリの利用者を対象に、身体活動を促進するための個別化機能として有効な要素を調査しました。その結果、家族や仲間の支援、目標設定やリマインドなどのフィードバック機能が動機づけ要因となる一方、仕事による時間制限や疲労などが障壁要因として挙げられました。
健康管理アプリは、体重管理や生活習慣改善を支援するツールとして急速に普及しています。一方で、多くのアプリの個別化機能は、食事と栄養の記録やフィードバックなどが中心で、健康づくりに重要な身体活動の促進について、利用者の生活状況に合わせて個別に支援する機能は十分とは言えません。そこで本研究では、健康管理アプリの利用者を対象に、フォーカスグループインタビューを実施し、身体活動に関する認識、動機づけ要因、障壁要因を質的に探索しました。
インタビューには11人(男性3人、女性8人)が参加し、発言内容をテーマ分析および社会生態学モデルに基づいて分析しました。その結果、「身体活動という表現は認知していないが動くことは意識している」「健康診断の結果を良くするために動いている」「家族と一緒だと動ける」「仕事の疲労でなかなか動けない」などの発言が多く得られました。これらの分析を通じて、身体活動に関する教育の重要性、および、健康管理アプリからのフィードバックが動機づけ要因になること、当日の体調などの情報に合わせた運動メニューの提案が有効であることなどが示唆されました。
健康管理アプリの開発において、これらの知見を踏まえることで、身体活動促進の個別提案機能の強化につながると考えられます。
研究代表者
筑波大学体育系 中田 由夫 教授 SHI YUTONG 研究員
株式会社Wellmira ソリューション事業部 柳澤 智子 シニアリーダー
研究の背景
近年、スマートフォンの健康管理アプリは体重管理や生活習慣改善を支援するツールとして普及し、食事記録や栄養指導、目標管理などの利用者ごとに対する個別化機能が充実してきました。一方で、健康づくりに重要な身体活動注1)促進については、各人の生活環境の影響を受けやすく、共通の通知機能だけでは効果が限定的です。従って、健康管理アプリの個別化機能を充実させるためには、身体活動促進に着目した個別化機能の実装が必要と考えられます。そこで本研究では、健康管理アプリ利用者への質的調査を通じて、身体活動個別化機能に必要な要素を明らかにすることを目的としました。
研究内容と成果
本研究では、健康管理アプリの利用者を対象に、アプリ内の通知を通じて、年齢・性別・BMIなどの制限を設けず参加者を募集しました。31歳から76歳までの合計11人(男性3人、女性8人)に対して対面またはオンラインで、1時間のフォーカスグループインタビュー注2)を3回に分けて実施し、意見を収集しました。質問は、①身体活動の重要性に対する認識、②身体活動促進の動機づけ要因、③身体活動促進の障壁要因、の3つを設定しました。
得られた発言内容についてテーマ分析を用い、質問①は帰納的に、質問②③は社会生態学モデル注3)に基づいてコード化(質的分類)しました(表1、2)。その結果、参加者は「身体活動」という単語は認知していなかったものの、「日常の動きを増やすこと」や「座位時間を減らすこと」の重要性は理解していました。また、動機づけ要因としては、気分の改善や運動後の達成感、体の見た目の変化のような個人要因のほか、家族の支援などの社会文化的要因も挙げられました。健康管理アプリの機能としては、目標設定、フィードバック、リマインド、褒め言葉などに対する期待が示されました。さらに、体調や生活スケジュール、天候などの状況に応じた個別化提案が望まれていました。一方、阻害要因としては、仕事や家事による時間的制約、疲労、天候が多く挙げられました。加えて、テレワークによる座位時間の増加や、職場で身体活動を行う際の周りの人の目などの意見もありました。
今後の展開
本研究は、健康管理アプリの利用者の意見に基づいて、身体活動促進の個別化機能に求められる要素を整理しました。今後さらに、忙しい日でも実行可能な運動、悪天候時の代替案、座位中断の提案、褒め言葉等、利用者の生活状況に合わせた個別化機能の開発を進める予定です。より精度の高い個別化機能の実装、およびAI技術の活用により、アプリ利用の持続可能性が高まり、利用者の健康支援や福祉の推進につながると期待されます。
参考図
用語解説
身体活動
安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴う全ての活動。
フォーカスグループインタビュー
3~6人程度の対象者とモデレーターが特定のテーマについて座談会形式で話し合う定性調査手法。
社会生態学モデル
人間の行動や健康、社会現象を、個人、対人関係、組織、地域社会、政策という複数のレベルが相互に影響し合う環境(生態系)として捉える枠組み。
オフィスエルゴノミクス
職場における人間の身体的・精神的特性に合わせて機械、道具、環境を設計し、使いやすさや快適性、安全性を高める学問・技術。
研究資金
本研究は、筑波大学と株式会社Wellmiraとの共同研究契約に基づいて実施されました。
掲載論文
【題 名】 Understanding User Perspectives to Inform Personalized Physical Activity Promotion in a Healthcare Application: A Qualitative Focus Group Interview Study.(ヘルスケアアプリにおける個別化された身体活動促進のためのユーザー視点の理解:質的フォーカスグループインタビュー)
【著者名】 Yutong Shi, Jihoon Kim, Ryoko Mizushima, Shinichiro Mizuno, Tomoko Yanagisawa, Yoshio Nakata
【掲載誌】 JMIR Formative Research
【公開日】 2026年1月28日(オンライン先行公開)
【DOI】 10.2196/85390
問合わせ先
研究に関すること
中田 由夫(なかた よしお) 筑波大学体育系 教授
TEL: 029-853-3957 / Email: nakata.yoshio.gn@u.tsukuba.ac.jp
URL: https://sportsmed.taiiku.tsukuba.ac.jp/nakata-yoshio/
取材・報道に関すること
筑波大学 広報局
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